京都府立医科大学 血液内科

造血器悪性腫瘍の多段階悪性化clonal evolutionを促進する分子異常・分子制御異常の克服

疾患の多段階な進行・悪性化・形質転換を特異的に制御することが出来れば、疾患進行を防ぐことが可能になるかもしれません。そこで、本プロジェクトでは造血器悪性腫瘍において多段階的に病期進展、治療抵抗性獲得を促進する細胞分裂や染色体分配の制御異常、転写マシナリーの制御の異常、非コードRNAの異常について、その臨床的意義とメカニズムを幅広く研究を推進中です。

染色体不安定性・染色体異常クローン性進化の臨床的意義

「がん」は経過とともに染色体異常や遺伝子異常が付加的に増加し、蓄積していくことで、より悪性度の高い細胞へと形質転換していくことが大きな腫瘍生物学的特徴です。しかし、これまでB細胞性腫瘍において、こうしたクローン性進展が予後とどのようにかかわるのか明確ではありませんでした。我々はDLBCLでは、先述のような分子異常の有無とは無関係に、染色体クローン性進展の多寡が治療予後に直結する細胞遺伝学的イベントであることを確認しました(Mizuno Y, Cancer Med, 2018)。造血器腫瘍における染色体不安定性獲得のメカニズムの解明と解除戦略の確立のための基礎研究を推進するための基盤となる臨床的解析結果と位置づけ、研究を継続中です。予備的検討では、骨髄異形成症候群においても、染色体異常クローン性進展が予後に影響を与える可能性が示唆されており、現在、多数症例での解析を進めています(岡本、解析中)。